微生物学:血液型を変換できる酵素混合物を特定
Nature Microbiology
2024年4月30日
腸内細菌であるAkkermansia muciniphilaから見つかった複数の酵素が、ヒト赤血球細胞上に存在する既知の抗原とこれまで知られていなかった抗原を共に変換して、O型の血液を作ることが判明した。このことを報告する論文が、Nature Microbiologyに掲載される。今回の知見は、誰にでも適合する万能血液の入手可能性を高める、臨床的に意味のある解決法につながるかもしれない。
赤血球の細胞表面には、グリカンと呼ばれる糖鎖が存在する。これらのグリカンはヒトによって違いがあり、その異なった型はA型、B型、O型として知られている。輸血の際には血液型を適合させることが極めて重要で、適合しない血液細胞には免疫系が反応して、それが命に関わる可能性もある。O型の血液は、その糖の構造がABO型の全ての血液に共有されているため、誰にでも適合するが、その備蓄に限りがあることがある。そのため、A型やB型の血液をO型に変換できる方法が求められている。
今回、Maher Abou Hachem、Martin L. Oissonらは、A. muciniphilaが粘液中のグリカンを分解するために産生・使用する酵素を、生化学的にスクリーニングした。そして、A型とB型の赤血球細胞を効率よくO型に変換する、構造的に独特な複数の酵素の組み合わせを特定した。これらの酵素は、最近発見された拡大版のA型、B型に対しても有効であり、試験では、特にB型の変換の場合に、不適合反応を顕著に減少させた。
著者らは、これらの知見が、赤血球を処理して誰にでも適合する血液の備蓄を増やし、臨床上の問題を緩和することのできるツールとして使用できる可能性があると述べているが、A型の血液の変換を改善するためには、さらに研究が必要だと付け加えている。
doi:10.1038/s41564-024-01663-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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