気候変動:気候変動がワイン生産に及ぼす影響を評価する
Nature Reviews Earth & Environment
2024年3月27日
産業革命前からの全球的な気温上昇が2℃を超えると、現在のワイン生産地域の最大70%がワイン生産に適さなくなるリスクがかなり高くなることを示した総説論文が、Nature Reviews Earth & Environmentに掲載される。
現在のワイン生産地域は、主に中緯度(米国カリフォルニア州、南フランス、北スペイン、イタリアなど)に位置している。しかし、ブドウの収穫量や、収穫時のブドウの組成、その後のワインの品質が気候変動の影響受けた結果、ワイン生産の地理的分布が変化している。
今回の総説論文では、Cornelis van Leeuwenらが、世界規模で見たワイン生産の地理的分布の変化を示した。van Leeuwenらは、気候によって生じる条件別にマクロ地域を設定し、そこに各大陸とそのワイン生産地域を分類した上で、現在のワイン生産地域の49~70%(地球温暖化の程度に応じて変動する)がワイン生産に適さなくなるリスクがかなり高いという推定結果を示した。具体的には、現在のワイン生産地域の29%が極端な気候条件(例えば、熱波の増加や過度の干ばつ)に直面し、プレミアムワインの生産ができなくなる可能性があることが明らかになった。例えば、気温上昇が2℃を超えると、スペイン、イタリア、ギリシャ、南カリフォルニアの沿岸部や低地といった伝統的なワイン生産地域の90%が、過度の干ばつや熱波の頻発化のために、21世紀末までにワイン生産に適さなくなる可能性がある。また、現在のワイン生産地域の残りの41%についてもワイン生産に適さなくなるリスクが生じており、その将来は、有効な適応策が実施できるかどうかにかかっている。一方、現在のワイン生産地域の11~25%(例えば、米国ワシントン州や北フランス)は、気温の上昇に伴って生産量が増加する可能性があり、より高い緯度の地域(例えば、英国南部)や高度の高い地域では、ワイン生産に適した地域が新たに出現する可能性がある。ただし、こうした適性の変化の程度は、気温上昇のレベルに強く依存する。
van Leeuwenらは、近い将来、気候変動が世界のワイン生産に大きな変化をもたらし、ワイン生産者と消費者の両方がこうした変化に適応する必要が生じると結論付けている。また、ワイン生産用のブドウ栽培が新たな地域に拡大するのに伴い、自然生態系と生物多様性への影響を監視して、どのような悪影響であっても軽減できるようにする必要がある。
doi:10.1038/s43017-024-00521-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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