工学:記憶容量を増やした新しい光ディスクメモリが開発された
Nature
2024年2月22日
2次元ではなく3次元空間にデータを保存するディスクを使って、より多くのデータを記録する新しい方法について報告する論文が、Natureに掲載される。
人類のデータ需要が増加するにつれて、データ記憶技術によって保存できるデータの容量も増加している。光データストレージ(ODS)は、光を用いてデータを保存する方法で、一般にDVDなどが用いられ、低コストで耐久性に優れている。ただし、ODSは通常、単層構造の媒体にデータが保存されるため、記憶容量は限られている。
今回、Jing Wen、Hao Ruan、Min Guらは、3次元構造のODSを用いて、単層ではなく数百層にデータを保存する新しい方法を開発した。この方法は、AIE‐DDPRという新しい記憶媒体を使用している。AIE‐DDPRには、凝集誘起発光色素をドープしたフォトレジスト膜が用いられている。このフォトレジスト膜は、ナノスケールでのデータの書き込みと読み出しが可能で、光子を吸収する分子(光開始剤)と書き込まれたデータを読み出すための感光性分子でできている。
著者らは、画素サイズが54ナノメートルのレーザーを使用して、単一のディスク媒体上に1マイクロメートル間隔で100層までデータを保存して、ODSのフォトレジスト膜の面密度を大幅に向上させた。また、著者らは、フォトレジスト膜のより深い層に保存されたデータの質が、より表面に近い層に保存されたデータの質と同等であることも明らかにした。
著者らは、AIE-DDPRディスクを製造するためのワークフローが現在のDVDの製造方法と互換性がある点に注目し、フォトレジスト膜の製造がスケーラブルで経済的に実行可能であることが示されたと述べた上で、このODSプロセスの限界として、書き込み速度とエネルギー消費量を挙げている。
doi:10.1038/s41586-023-06980-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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