妊娠高血圧症候群:妊娠高血圧腎症の早期予測の質を高める血液由来バイオマーカー
Nature Medicine
2023年8月29日
血液中のDNAのメチル化レベルをリキッドバイオプシーによって測定すれば、妊娠高血圧腎症を発症するリスクのある妊婦の妊娠早期での判別が改善されそうだ。
妊娠高血圧腎症は、妊娠中の疾患の主要原因の1つである。妊娠34週以前に発症する早発型妊娠高血圧腎症は、重症疾患と胎児死亡のリスク上昇に関連している。使用可能な介入方法は少ないが、疾患の早い段階(妊娠16週以前)で低用量のアスピリンを投与すると、妊娠高血圧腎症の発症リスクが低下することがある。しかし、早期に介入を開始するには、この疾患を早期に見つけなければならない。分娩時には胎盤で広範囲にわたるメチル化レベルの変化が起きることが以前の研究で示されている。液体生検は、非侵襲的診断のための新しい方法として有望視されており、疾患の検出や進行と治療応答性のモニタリングに使われる例が増えつつある。
今回、B Thienpontらは、妊婦498人(その約3分の1が妊娠高血圧腎症を発症した)から得た血中DNAのメチル化データのプロファイリングを行った。その結果、対照群の妊婦と妊娠高血圧腎症を発症した妊婦ではDNAメチル化に差異があることが分かった。Thienpontらは、これらのデータを用いてモデルを作成し、妊娠高血圧腎症と診断された場合だけでなく、症状が出る前の段階(妊娠12週前後)でもリスク層別化ができるようにした。また、別な妊婦197人についてさらなる解析を行い、既に臨床で使用されている臨床的リスク因子および人口統計学的リスク因子をこのモデルに統合することで、早発型妊娠高血圧腎症患者の72%を正しく予測するリスクスコアが生成された。
Thienpontらは、血液を用いてのDNAメチル化解析が、早い段階での妊娠高血圧腎症のリスク予測を改善する可能性があることを示した。しかし、この手法の臨床的有用性をさらに確認するには、今後の研究に加えて前向きコホート研究が必要だと付け加えている。
doi:10.1038/s41591-023-02510-5
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