考古学:封印された古代エジプトの動物の棺に関する新たな知見
Scientific Reports
2023年4月21日
6つの封印された古代エジプトの動物の棺の中身が非侵襲的な方法で画像化された。この結果を記述した論文がScientific Reportsに掲載される。
動物のミイラ作りは、古代エジプトで広まっていた慣習で、動物のミイラは、神の肉体的な化身だと信じられていたり、神への供物とされていたり、儀式のパフォーマンスに使用されたりしていたことが以前の研究で示唆されていた。
今回、Daniel O’Flynnたちは、中性子断層撮影法(中性子源から放出された中性子が物体を透過する程度に基づいて物体の画像を生成する技術)を用いて、6つの封印された動物の棺の中身を画像化した。過去の研究では、X線で棺を調べようとしたが、十分な成功を収められなかった。6つの棺は、全て銅合金でできている。O’Flynnたちは、このように今でも封印された状態になっている動物の棺は稀であることを指摘している。そのうちの3つの棺は、古代都市ナウクラティスがあった地域で発見され、棺の上部には、トカゲやウナギの彫像やリング状の構造物がついており、紀元前500~300年のものと判定された。4番目の棺は、古代都市テル・エル・イェフディエーがあった地域で発見され、上部にトカゲの彫像がついており、紀元前664~332年のものと判定された。他の2つの棺は、発見場所が不明で、紀元前650~250年頃のものとされ、棺の上部には、一部がウナギで一部がコブラの彫像とヒトの頭が組み合わされた構造体がついている。
O’Flynnたちは、3つの棺の中に骨があることを確認した。例えば、カベカナヘビ類の頭蓋骨と同じような大きさの頭蓋骨が無傷の状態で見つかった。カベカナヘビ類には、北アフリカの固有種が含まれている。別の2つの棺の中には、バラバラになった骨の存在を示す証拠が見つかった。また、3つの棺の中には、リネンで作られた可能性のある布の繊維片が確認された。リネン布は、古代エジプトのミイラ作りで一般的に使用されていた。O’Flynnたちは、動物のミイラをリネン布で包んでから棺の中に安置したのではないかという見方を示している。また、リング状の構造物がついていない3つの棺の成分に鉛が含まれていることが判明したが。この点について、O’Flynnたちは、2つの棺では、棺内の重量配分を補助するために用いられ、もう1つの棺では、穴の修理に用いられたという考えを示している。鉛が選ばれたのは、鉛が古代エジプトで魔法の材料と位置付けられていたためだったとO’Flynnたちは推測している。過去の研究では、鉛が愛のお守りや呪いに使われていたという見解が示されていた。棺の上部にリング状の構造物がついている3つの棺からは鉛が検出されなかった。これらの棺は相対的に軽量で、このリングが、神社や寺院の壁や、宗教儀式の行列の際に使用される像や船から吊り下げるために使用された可能性があり、リング状の構造物がついておらず、相対的に重く、鉛が含まれている棺は、別の目的に使用された可能性があるという見解をO’Flynnたちは示している。
doi:10.1038/s41598-023-30468-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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