天文学:金属量の少ない星が持つ惑星が生命体の生存に適しているかもしれない
Nature Communications
2023年4月19日
金属量の少ない星のハビタブルゾーン(生命居住可能領域)に位置する惑星は、生命体候補の探索を行う標的として最適である可能性を示唆した論文が、Nature Communicationsに掲載される。
高レベルの紫外線(UV)放射は、生命体のゲノム損傷を引き起こす可能性がある。地球の大気中の酸素とオゾンは、太陽からの有害なレベルの紫外線が地球の生物圏に到達しないように守っているが、紫外線放射量は、星によって異なっている。恒星が放射する紫外線のレベルが低いと、惑星の大気中オゾン濃度が低下し、紫外線に対する防御力が低下することが知られている。しかし、恒星の金属量(恒星における水素とヘリウムよりも重い元素の存在量)が紫外線防御や惑星の生命居住可能性に及ぼす影響は明らかになっていない。
今回、Anna Shapiroたちは、さまざまな金属量の恒星を親星とする仮説上の地球型惑星について、それぞれの大気モデルを構築した。その結果、金属量の少ない星を周回する惑星の方が紫外線を強力に遮蔽する性質を有し、生命体の存在可能性に影響を与える可能性があることが明らかになった。そして、金属量の多い星は、金属量の少ない星よりも紫外線放射量がかなり少ないが、金属量の多い星を周回する惑星の表面は、金属量の少ない星を周回する惑星の表面より強い紫外線にさらされることも分かった。Shapiroたちは、金属量の多い星を周回する惑星は、紫外線の入射量が相対的に少ないにもかかわらず、生命体の生存に適していないという見方を示している。
doi:10.1038/s41467-023-37195-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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