古生物学:あるカンブリア紀の化石の真の正体
Nature
2023年3月9日
Palaeontology: Cambrian fossils get a new identity
5億年以上前のカンブリア紀の化石を再解釈した結果、動物ではなく藻類の化石であったことが示唆されたことを報告するMartin Smithたちの論文が、Natureに掲載される。この研究知見は、カンブリア紀の動物の進化と生態系における藻類の役割に関する学説に異論を唱えるものとなった。
カンブリア紀における動物の進化は、化石記録から明らかになっているが、苔虫動物(コケに似た水生無脊椎動物)だけがカンブリア紀の地層から見つかっていない。今回のSmithたちの論文では、2021年にNatureに掲載された論文に示されたカンブリア紀の化石Protomelissionを苔虫動物とした解釈に異論を唱えている。今回の論文には、中国南部のシャオシバ・ラーゲルシュテッテンで発見されたProtomelissionに似た保存状態の良い化石が記述され、これが緑藻植物門カサノリ目に属する底生光合成藻類の一種だと結論付けられている。この研究知見は、苔虫動物の化石であることが明確なカンブリア紀の化石が依然として見つかっていないことを意味している。
また、Smithたちは、このProtomelissionに似た化石と地理的に広く分布したcambroclaveの小さな脊椎状の化石を比較し、cambroclaveの一部もカサノリ目藻類である可能性があると結論付けた。以上の知見を総合すると、前期カンブリア紀の生態系では、生体内で鉱物形成が起こる底生海藻が、これまで考えられていたよりも大きな貢献をしていたことが示されている。
doi:10.1038/s41586-023-05775-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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