保全:サンゴ礁に生息するサメとエイの多くが絶滅の危機に瀕している
Nature Communications
2023年1月18日
世界中のサンゴ礁に生息するサメ種とエイ種の3分の2近くに絶滅の恐れがあることを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。サンゴ礁に生息するサメやエイの絶滅リスク(絶滅危惧種の占める割合)は、既知のサメ種とエイ種(全1199種)の絶滅リスクの約2倍であることが、今回の研究の結果から示唆された。こうした新知見は、各地域での保護措置、漁業管理と漁場の取締り、海洋保護区という手段によって、これらのサメ種とエイ種の保全活動を早急に始める必要性を強く示している。
サンゴ礁は、全球的な気候変動の被害を受けるリスクが最も大きい生態系の1つである。サメとエイは、サンゴ礁生態系が機能するために非常に重要な役割を果たし、濾過摂食者、頂点捕食者など一定範囲の生態的地位(ニッチ)を占有している。一部のサメ種とエイ種の個体群が急激に縮小しており、その原因が乱獲だとされたが、全世界のサンゴ礁に生息するサメやエイの状況については未解明の点が残っている。
今回、Samantha Shermanたちは、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種レッドリストを用いて、サンゴ礁に生息するサメとエイ(全134種)の絶滅リスクを評価し、その状況について、サンゴ礁に生息する他の生物種と比較した。その結果、サンゴ礁に生息するサメ種とエイ種の59%(例えば、エイラクブカ属のHemitriakis leucoperipteraやオトメエイ属のHimantura uarnak)に絶滅のおそれがあり、海洋哺乳類に次いで世界で最も絶滅のおそれのある分類群であることが明らかになった。また、サンゴ礁に生息するサメ種とエイ種にとっての主たる脅威が漁業であり、生息地の減少や気候変動によって脅威が増していることも明らかになった。絶滅リスクが最も高いのは、60カ国以上の海域に生息するオオメジロザメやナンヨウマンタなど、広く分布する大型種であることがわかった。また、漁獲圧が高く、ガバナンスが弱い国々(ブラジル、タンザニア、インドネシアなど)で、絶滅リスクが最も高かった。
今回の知見から、サンゴ礁に生息するサメとエイの保全状況を改善するための行動をとらないと、個体数が減少して、サンゴ礁の健康とサンゴ礁に依存する沿岸地域の数億人の住民に深刻な影響が及ぶかもしれないことが示唆されている。
doi:10.1038/s41467-022-35091-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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