環境:ペットの食餌をドライフードにすると環境への影響が緩和される
Scientific Reports
2022年11月18日
ブラジルでペットを対象とした研究が行われ、飼い主が、水分を多く含んだウェットフードではなくドライフード(小粒のキャットフードやドッグフード、ビスケットなど)をネコやイヌに与えると、ペットの食餌が環境に及ぼす影響が有意に減少するかもしれないことが明らかになった。この研究知見は、飼い主がペットに十分な栄養素とカロリーを与えつつ、もっと持続性の高い食餌を実現できることを明確に示している。今回の研究を報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。
ペットのネコやイヌの数は世界的に増加している。現在、米国にはイヌが7680万匹、ネコが5840万匹、ブラジルにはイヌが5220万匹、中国にはネコが5310万匹いると推定されている。しかし、ペットの食餌が環境に与える影響は明らかになっていない。
今回、Marcio Brunettoたちは、ブラジルのイヌの食餌(618種)とネコの食餌(320種)について、それらの環境影響(温室効果ガス排出量、土地利用、水の使用量など)を評価した。今回の研究では、ブラジルの大手ペットフード小売業者3社のウェブサイトに掲載されたウェットフードとドライフードの市販品が調査対象になった。そして、これらの市販品は、メーカー製の手作りの食餌と飼い主がメーカーのレシピを使って自宅で調製した食餌と比較された。さらにBrunettoたちは、これらの食餌の栄養素の構成とカロリー構成を評価した。
ネコとイヌのウェットタイプの食餌の環境影響は、全ての変数で最も大きく、特にドライフードとの差が大きかった。手作りの食餌の環境影響は中程度という傾向だったが、ネコ用の手作りの食餌の水の使用量はドライタイプの食餌と同程度だった。Brunettoたちの推定によると、体重10キログラムのイヌが1日平均534カロリーを摂取する場合には、ドライタイプの食餌では年間828.37キログラムのCO2が排出されるのに対し、ウェットタイプの食餌では年間6541キログラムのCO2が排出され、ドライタイプの食餌と比べて689%増(ほぼ8倍)となった。
ドライタイプの食餌は1グラム当たりのエネルギー量が最も多く、ウェットタイプの食餌と手作りの食餌は、タンパク質の量が多かった。ウェットタイプの食餌の場合、ドライタイプの食餌のほぼ2倍のエネルギー量が動物性成分によって得られ(89.27%対45.42%)、これが、環境影響が大きくなった一因である可能性がある。
以上の結果は、ペットフードの広範囲にわたる環境影響やペットフードの持続性を高める必要性を明らかにし、その実現のための1つの方法を示している。
doi:10.1038/s41598-022-22631-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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