機械的記憶装置
Nature Nanotechnology
2011年10月24日
非常に小さいシリコンの梁が機械的記憶素子として使えることが、Nature Nanotechnology電子版に報告される。この記憶素子は、電源につながなくても情報を保持でき、光通信システムや信号処理への応用が考えられる。
このシリコン梁は光機械的回路の一部であり、シリコン梁の機械的エネルギーと光共振器内のレーザー光との間でエネルギー交換が可能である。シリコン梁の両端はシリコンチップに取り付けられており、シリコン梁が軽くたわむように設計されている。つまり、梁はアップとダウンのいずれかの状態をとる。光共振器内にレーザーを照射することによって、梁を振動させることもできる。今回、H Tangらは、光機械的増幅を利用して梁を高振幅振動状態に励起できること、また光機械的冷却を利用して振動を止められるので、レーザーをオフにすると梁を特定状態に戻せることを示した。素子への情報書き込みは、梁の最終状態の制御によって可能になる。書き込まれた情報は、別のレーザーで読むことができる。
初期の頃のコンピューターは、機械的メモリーを持つものが多かった。しかし、今日では、電子・磁気メモリーがデータ記憶の主流である。1ビットのデータを記憶させるのに必要なエネルギーを比較すると、今回の新しい方法は、現代の記憶素子の100万倍以上のエネルギーを要する。しかし、将来、もっとQ値の高い共振器が使えるようになれば、ナノ機械的メモリーに必要なエネルギーは減らせるであろう。
doi:10.1038/nnano.2011.180
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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