生態学:クジラ類のマイクロプラスチック摂取量の推定
Nature Communications
2022年11月2日
クジラによるマイクロプラスチックの摂取をモデル化した研究で、米国カリフォルニア州の沿岸周辺に生息する濾過摂取性のクジラ類が摂取するマイクロプラスチックを1日当たり最大1000万個とする推定結果が得られた。今回の知見は、ヒゲクジラ類が、最も大量にマイクロプラスチックを摂取している生物である可能性があり、ヒゲクジラに対するマイクロプラスチックのリスクが、これまで考えられていたよりも大きいかもしれないことを示唆している。今回の研究を報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。
ヒゲクジラ類(シロナガスクジラ、ザトウクジラ、ナガスクジラなどが含まれる)は、濾過摂取行動しており、餌を大量捕食していて、汚染海域(例えばカリフォルニア海流)と生息域が重複しているため、特にマイクロプラスチック摂取のリスクが高くなっている可能性がある。しかし、日常的なプラスチック摂取量に関するデータが不足しているため、クジラ類への健康影響や影響を緩和する計画に関する理解を深めるための曝露リスク評価の開発が進んでいない。
今回、Shirel Kahane-Rapportたちは、カリフォルニア海流生態系で得たマイクロプラスチックのデータと、標識したシロナガスクジラとナガスクジラとザトウクジラ(合計191頭)の採餌行動の高分解能測定結果を合わせて、クジラの採餌パターンを評価し、日常的なマイクロプラスチックの摂取を定量化した。その結果わかったのは、ヒゲクジラ類が、主に水深50~250メートルの海域で採餌しており、この海域のマイクロプラスチック濃度が最も高いことだった。Kahane-Rapportたちは、以上の測定結果に基づいて、マイクロプラスチックの摂取量を推定し、シロナガスクジラが1日に約1000万個、ザトウクジラが1日に最大400万個を摂取している可能性があるとした上で、ヒゲクジラ類が、マイクロプラスチック摂取の生理学的負荷と毒性学的負荷の累積作用を受けるリスクにさらされている可能性があるという考えを示している。
以上の知見は、過去の捕鯨や人為的影響から回復しようとしているクジラ類にとって、マイクロプラスチックが新たなストレッサー(ストレスを引き起こす刺激)となっていることを強く示している。Kahane-Rapportたちは、マイクロプラスチックの摂取率と野生の海洋生物への影響を理解することが、保全上の難題となったプラスチック廃棄物に取り組む上で極めて重要だと主張している。
doi:10.1038/s41467-022-33334-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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