がん:併用免疫療法によって皮膚がんの転帰が改善されるかもしれない
Nature
2022年10月27日
レラトリマブとニボルマブを用いる併用免疫療法によって、外科的に切除可能な進行期黒色腫患者の転帰を改善させることができるという第2相臨床試験の結果が明らかになった。この暫定的知見は、進行期黒色腫に対する新しい併用療法の有効性と安全性に関するさらなるエビデンスとなる可能性がある。これらの知見を報告する論文が、Natureに掲載される。
レラトリマブとニボルマブという薬剤を用いる併用免疫療法が、2022年3月に米国食品医薬品局(FDA)によって承認された。この承認は、外科的に切除できない進行期転移性黒色腫を対象とした第2/3相RELATIVITY-047試験で安全性と有効性に関して良好な結果が得られたことを受けたものだった
今回、Rodabe Amariaたちは、進行期転移性黒色腫の初期における、この併用免疫療法の奏効可能性をさらに解明するため、外科的に切除可能な進行期黒色腫患者30人を対象として、この併用療法を調べる研究を行った。今回の研究で、患者は、手術前にレラトリマブとニボルマブを2回投与され、手術後にさらに10回投与された。なお、患者の1人は手術を受けなかった。そして、全体で17人の患者が病理学的完全奏効(手術により摘出した組織に腫瘍が存在しないというエビデンスが得られたこと)を達成し、全体の約70%で何らかの奏効が達成されたことを示すエビデンスが得られた。手術前の投与(術前補助療法)において重篤な免疫関連副作用は発現しなかった。また、術後1年と2年の追跡調査では、黒色腫再発のエビデンスがない生存率が、術前補助療法の病理学的奏効が確認された患者で100%(術後1年)と92%(術後2年)だったのに対し、奏効が確認されなかった患者では88%(術後1年)と55%(術後2年)だった。
Amariaたちは、今回の研究は、サンプルサイズが小さく、今後の研究で長期的な臨床的影響を見極める必要があるが、こうした初期データが期待を集めていると結論している。今回の研究によって得られた知見を過去の臨床試験の結果と考え合わせると、併用免疫療法の長期効果の可能性を早期に予測するための因子として病理学的奏効率を用いることが有益なことを示す証拠となる可能性がある。
doi:10.1038/s41586-022-05368-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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