工学:歩行補助装置の改善に向けた歩み
Nature
2022年10月13日
利用者に順応し、現実世界の状況下で、より速く、効率的に歩くことを支援する外骨格「ブーツ」について記述した論文が、Nature に掲載される。今回の研究で得られた知見は、ウエアラブルロボットの設計に対する新しいアプローチを実証し、このデバイスが日常生活で広く使用される可能性を明確に示している。
歩行速度を上げ、必要なエネルギー量を減らすことで脚の動きを補助する外骨格は、運動障害のある人や肉体的にきつい仕事をしている人に役立つことがある。このデバイスの利点は、もっぱらトレッドミルを使用した研究室で実証されているだけで、歩行速度や歩行時間が多様な現実の状況下では実証されていない。
今回、Patrick Sladeたちは、これらの課題に取り組むため、データ駆動型モデルと低コストの携帯型センサーを組み合わせた手法を開発した。このモデルでは、センサーによって収集された情報(足首の角度や速度など)に基づいて外骨格デバイスが歩行に与える影響を評価し、個々のユーザーの歩行特性に最も適したデバイスに調整することができる。その結果、新しい手法が、従来の実験室での方法と同じように外骨格の最適化に有効であるだけでなく、4倍の速さで効果を発揮することが分かった。この結果と現実世界の最適化データに基づいて、それぞれの足首に装着する外骨格と腰に装着するバッテリーパックからなる特殊な足首外骨格が設計された。このデバイスを使用すると、標準的な靴と比較して、歩行速度が9%上がり、自然歩行時のエネルギーコストが17%削減され、エネルギー節約量は、9.2キログラムのバックパックを取り外して歩く場合と同等だった。
以上の知見は、この新しい手法によって外骨格を個別のニーズに最適化させて、外骨格の性能向上を図れることを実証した。このデバイスを実用化し、この手法を他のデバイスや活動に順応させる方法を探究するためには、今後の研究が必要とされる。
doi:10.1038/s41586-022-05191-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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