技術:ロボット工学と人工知能システムを併用して電池開発をスピードアップ
Nature Communications
2022年9月28日
ロボット工学と人工知能(AI)を組み合わせてリチウムイオン電池用の非水系電解液の最適配合を特定する方法について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究は、充電の高速化や長寿命化など、より高機能な充電池の開発を加速するかもしれない。
運輸と航空の電動化を進めるためには、高性能電池技術の開発が欠かせない。リチウムイオン電池の材料を発見するための従来の手法は、数多くの材料候補の選択肢について実験を行う必要があるために時間を要し、開発には何年もかかることがある。この過程を迅速化する1つの方法として、AIとロボットを組み合わせて最適な電池材料を発見する方法が提案されている。
今回、Venkat Viswanathan、Jay Whitacreたちは、Clioという名のロボットプラットフォームを設計し、これをDragonflyというAIと組み合わせた。Viswanathanたちは、これらのツールを用いて、このシステムが、リチウムイオン電池用の導電率の高い非水系電解液の配合を2稼働日で自律的に特定できることを実証した。この方法によって、ランダム探索による場合の6倍の速さで電解液の探索が可能になると説明されている。そして、Viswanathanたちは、この非水系電解液を使って、商業的に成立するリチウムイオンパウチセルを作製して検証を行い、従来の電解液材料によるベースライン実験の結果と比較して、急速充電性能を有していることを実証した。
今回の研究は、高性能充電式電池の開発に役立ち、エネルギー応用やより一般的には材料科学に影響を与えるかもしれないとViswanathanたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41467-022-32938-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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