健康:ある種の投薬治療が、暑さから来る心臓発作のリスクに影響する可能性がある
Nature Cardiovascular Research
2022年8月2日
抗血小板薬やβ遮断薬を服用している患者では、暑さに関連した非致死性の心臓発作のリスクが高まる可能性があることを報告した論文が、Nature Cardiovascular Research に掲載される。ただし、このような作用が本当にあるかを確認するには、さらなる研究が必要である。
寒さや暑さが心臓発作の引き金になることは立証されており、これまでの疫学研究により、地球温暖化が2℃あるいは3℃になると、おそらく暑さに関連した心臓発作が増加するとみられている。
Kai Chenたちは、ドイツのアウクスブルグで2001〜2014年の5月~9月に心臓発作を起こした患者2494人のデータを解析し、患者の臨床情報を毎日の気象情報、薬剤投与と対照した。すると、報告されている薬剤投与のうち、抗血小板薬とβ遮断薬(この2つは心臓血管病の薬として広く処方されている)を投与されている患者では、投与されていない患者に比べ、暑さに関連した非致死性の心臓発作のリスクが高いことが分かった。またこの効果は、基礎疾患として冠動脈性心疾患の有病率の低い比較的若い患者(25歳~59歳)の方が、高齢の患者(60~74歳)に比べて強くみられた。ただ、このデータの性質から考えて、抗血小板薬やβ遮断薬を使っている患者はより具合が悪い患者であって、もともとの病気の重さのために暑さに関連した心臓発作を起こしやすく、そのためにリスクが高くなっている可能性は除外できないと、著者たちは述べている。この疑問に答えるためには、もっと大規模に患者を集めてさらに研究する必要がある。
Chenたちは、これらの知見が、気温上昇に関連した心臓血管病の負担を軽減する標的化治療戦略の開発に役立つ可能性があると述べている。
doi:10.1038/s44161-022-00102-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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