考古学:マヤパンの崩壊に干ばつが関係していた
Nature Communications
2022年7月20日
ユカタン半島にあったマヤパンは、西暦13~14世紀にマヤの首都だったが、干ばつのために内戦が増え、政治的崩壊につながった可能性があることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、気候が古代社会の安定に影響を及ぼしたとする学説を裏付けている。
コロンブス以前のメソアメリカでは、降水量が食料生産に及ぼす影響は、人間の移住、人口減少、戦争、政権交代と密接に関連していた可能性があるが、そのために気候の圧力に直面した際の回復力、変化、持続可能性がもたらされた可能性もある。1200~1450年に存在していた政治的首都マヤパンは、植民地時代の文書に記録が残っているため、気候が内戦に与える影響を調べる上で特に適している。
今回、Douglas Kennettたちは、歴史資料から暴力の記録を調べ、マヤパン由来の人骨に外傷の徴候がないか調べた上で、これらの事例を干ばつ状態の指標と比較した。その結果、降水量の増加とマヤパンの人口増加が関連しており、その後の降水量の減少と紛争が関連していることが明らかになった。Kennettたちは、西暦1400〜1450年に続いた干ばつが当時の社会の緊張を高め、最終的にはマヤパンの放棄につながったという考えを示している。
Kennettたちは、マヤパンの住民は、マヤパンの崩壊に伴い、繁栄している他の小さな町に移住し、こうした適応行動が、地域規模の回復力をもたらし、マヤの政治・経済構造が16世紀に持ちこたえることができたと主張している。そして、Kennettたちは、ユカタン半島の干ばつに対する人間の対応は複雑であり、今後の気候変動を乗り切る上で重要な参考例になると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-022-31522-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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