エネルギー:テキサス州のエネルギーインフラの冬に備えた整備は長い目で見れば利益をもたらす
Nature Energy
2022年4月5日
米国テキサス州のエネルギーシステムを冬に備えて整備する(ウィンタライゼーションとも呼ばれる)と、30年の時間枠内でその費用を取り戻せるとともに、かかった費用より1桁以上大きな利益をテキサス州の人々の福利にもたらすことができると示唆する論文が、Nature Energy に掲載される。
2021年の冬季にテキサス州の電力システムで起こった大規模な停電によって、凍りつくような寒波の中、450万人もの人々が電力を利用できなかった。停電の原因については議論が続いているが、その一方で冬に備えたエネルギーシステムの整備は遅れており、電力会社やガス会社と規制機関は、自由化された電力市場において冬に備えて整備する費用を正当化しようと努めている。
今回、Katharina Gruberたちは、過去のデータを用いて2021年の冬季とよく似た事象が繰り返される可能性を見積もり、当時の電力システムが現在と同じだったとすれば、過去71年間に同様の停電が8回起こった可能性があることを見いだした。次にGruberたちは、電力会社からガス供給まで、エネルギーシステムのさまざまな発電技術が冬に備える費用を見積もった。そして、こうした費用と冬に備えて整備されたシステムが創出する可能性がある収益を比較した結果、ガス発電所を整備する費用がギガワット当たり4億5000万ドル(約495億円)であるのに対し、電力会社の収益は30年間で10億6000万ドル(約1166億円)であった。
Gruberたちは、今回の知見は、冬に備えたガス発電所とインフラの整備を重視することによって現行の法規を改善できることを示唆していると主張している。
doi:10.1038/s41560-022-00994-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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