生態学:サバンナの保全による炭素貯蔵効果の評価
Nature
2022年3月17日
サバンナにおいて防火と植林に力を注いでも、数十年のタイムスケールでは、炭素貯蔵量の大幅な増加につながらない可能性があることを明らかにした論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、気候変動緩和のためにサバンナの樹木被覆率を高めることの利点に疑問を投げ掛けている。
世界の火災による炭素排出量の半分以上がサバンナに由来している。防火と植林を進めて樹木被覆率を高めることは、炭素貯蔵量を増加させることによって炭素排出量を削減する戦略として提唱されている。しかし、サバンナの地上と地下の炭素貯蔵量を推定する長期研究は行われていなかった。
今回、Yong Zhou、Carla Staverたちは、68年前に南アフリカ共和国のクルーガー国立公園で行われた火災実験のデータを基にして、毎年火災で焼失している区画を、火災被害のない区画と、3年おきに火災で焼失している区画と比較し、各区画の土壌と植物の炭素貯蔵量を推定した。その結果、防火によって研究対象地域の生態系全体の炭素貯蔵量は増加するが、これは年間でヘクタール当たり約0.35トンの炭素にすぎず、以前の推定値の約30分の1であることが明らかになった。
同時掲載のNews & Viewsで、Niall HananとAnthony Swemmerは、これらの実験が、クルーガー国立公園の最も湿潤な区画で実施され、区画の数も少なかったことを指摘し、「火災が起こりやすいサバンナにおける防火と植林の役割をさらに探究するためには、他の地域でも同様の研究を行う必要がある」と述べている。
doi:10.1038/s41586-022-04438-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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