遺伝学:COVID-19における嗅覚消失や味覚消失の遺伝的リスク因子が特定された
Nature Genetics
2022年1月18日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状として嗅覚消失や味覚消失が知られている。それらの症状の表れやすさに影響する遺伝的リスク因子を明らかにした論文が、Nature Genetics に掲載される。2つの遺伝子(UGT2A1とUGT2A2)の近傍の座位が症状の出やすさに関連しており、その座位の塩基配列の違いによって、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後に嗅覚消失、味覚消失のいずれかを発症する確率が11%増加した。
嗅覚消失や味覚消失は、COVID-19に特有の症状だが、SARS-CoV-2感染者に必ず表れる症状というわけではなく、原因となる機構は明らかになっていない。
今回、Adam Autonたちは、米国や英国に居住する18歳以上の研究参加者6万9841人(女性63%、男性37%)から集めたオンライン調査データを用いて、ゲノムワイド関連解析を行った。その結果、2つの遺伝子(UGT2A1とUGT2A2)の近くに位置する一連のバリアント(塩基配列の違い)によって、SARS-CoV-2に感染した人が嗅覚消失や味覚消失を経験する確率が11%増加することが判明した。UGT2A1とUGT2A2は、鼻の内壁を覆う細胞で発現し、匂い物質(匂いの感知に関与する受容体に結合する物質)の除去に関係する酵素をコードしている。
この発見は、COVID-19関連の嗅覚消失や味覚消失の根底にある生物学的機構に関する手掛かりとなる。ただし、Autonたちは、今回の研究は、サンプルサイズが大きいにもかかわらず、ヨーロッパ系の人々に偏っている点に注意を要すると述べている。今回用いられた調査では、嗅覚消失と味覚消失を分けずに質問が作成されていたが、両者の区別も必要である。また、Autonたちは、自己報告された症状に依存するのではなく、臨床的に再現性を得る研究を行うことも有用となるだろうと付け加えている。
doi:10.1038/s41588-021-00986-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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