オゾン汚染のために東アジアの作物の収量が630億ドル相当の減少になった
Nature Food
2022年1月18日
東アジアの作物生産で、1年間に推定630億ドル(約6兆9300億円)相当の収量減少が発生し、それがオゾン汚染に関連していることを報告する論文が、Nature Food に掲載される。この推定値には、日本、中国、韓国における3種類の主要商品作物(コムギ、イネ、トウモロコシ)の相対収量の減少が含まれている。
アジアでは、温室効果ガスの一種であるオゾンの地表濃度が上昇しており、食料需要の増加に伴って上昇を続けることが予想されている。オゾン汚染への曝露は、作物の成長と農業生産を阻害し、食料安全保障に対するリスクとなっている。こうした影響の定量化は、これまで何度も試みられてきたが、観測データや実験データがないために偏りを生じる傾向が強かった。
今回、Zhaozhong Fengたちは、アジアの主な農業生産地域の実験データを用いて、3種類の主要作物(コムギ、イネ、トウモロコシ)のオゾン曝露–反応関係を構築した。そして、この情報について、Fengたちは、中国、日本、韓国の合計3000か所以上の観測地点での大気中オゾン濃度の測定データで補足した。相対収量の減少が最も顕著だったのが中国で、減少幅は、コムギ33%、イネ23%、トウモロコシ9%だった。全体で、オゾン汚染による作物生産の年間収量減少は630億ドルと推定された。
Fengたちは、このようにオゾン汚染が作物生産に及ぼす影響は、地域レベルのオゾン排出規制の厳格化と適応策が必要なことを明確に示していると結論付けている。
doi:10.1038/s43016-021-00422-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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