化学:大気中に放出される商業化学物質の反応生成物によるリスクの評価
Nature
2021年12月16日
大気中で複数の商業化学物質が引き起こす反応の生成物は、それらの親化学物質より強い毒性を有する可能性があることを示唆する論文が、Nature 誌に掲載される。今回の研究は、これらの化学生成物が18の巨大都市の大気中に検出されたことを示しており、これらの都市の住民へのこれまで知られていなかった曝露リスクが明らかになった可能性がある。
商業化学物質は、都市部全体で使用されており、約42億人にリスクをもたらす可能性がある。有害化学物質については、環境中での残留性、生物蓄積(化学物質が生物に蓄積すること)の可能性、毒性の評価が行われ、その使用は、国内的枠組みや国際的枠組みによって管理されている。しかし、規制は親化学物質に関する我々の知識に基づいて決定されることが多く、大気中の商業化学物質の相互作用による生成物の潜在的影響については、ほとんど分かっていない。
今回、John Liggioたちは、実験室実験と野外実験、疑わしい化学物質のモニタリングとモデル化を組み合わせて、大気中化学物質の化学物質の反応を考慮しながら、これらの物質のリスクを評価するための枠組みを構築した。そして、Liggioたちは、この枠組みを消費者製品や工業製品に広く用いられている有機リン系難燃剤に適用した。その結果、変換生成物質は、親化学物質と比べて、平均して、毒性が強く、残留性が1桁高いことが判明した。また、Liggioたちは、変換生成物質によって生じる全リスクは、親化学物質の場合よりも大きくなり得ると示唆している。
Liggioたちは、変換生成物質が、世界18都市(ロンドン、ニューヨークなど)の中心市街地に分布しており、都市の住民に潜在的リスクをもたらすことを明らかにした。Liggioたちは、今回の研究は、商業化学物質がもたらす潜在的リスクを評価する際に、化学物質の大気中での変換を考慮することの必要性を強調していると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-04134-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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