がん:胃腫瘍に対する3剤併用療法
Nature
2021年12月16日
免疫療法を化学療法と標的薬と併用する治療法が、HER2陽性の進行胃腫瘍患者の転帰を改善する可能性があることを示唆する論文が、Nature に掲載される。今回の研究は、第III相臨床試験の中間解析に基づいており、これがきっかけとなって、米国食品医薬品局(FDA)が、この治療法の臨床使用を承認した。
進行性の胃腺がんや胃食道接合部腺がんの患者の約20%で、ヒト上皮成長因子受容体2タンパク質(HER2)が過剰発現している。ここ10年以上にわたって、これらの患者の標準的な第一選択治療は、抗HER2抗体トラスツズマブと化学療法の併用療法だ。
今回、Yelena Janjigianたちは、KEYNOTE-811第III相臨床試験の一環として、この併用療法にペムブロリズマブという薬剤を追加することの利点を評価した。ペムブロリズマブは、免疫系が腫瘍細胞を認識して攻撃する際に役立つ抗体だ。この臨床試験に登録された264人の患者から有効性データが得られた。Janjigianたちは、トラスツズマブと化学療法にペムブロリズマブを追加したところ、腫瘍サイズが縮小し、一部の患者に完全奏効(一時的寛解)が誘発されて(完全奏効率が3.1%から11.3%に上昇)、良好な治療応答を示した患者の割合が有意に増加したことを明らかにした。
今回の臨床試験で有望な結果が得られたため、Janjigianたちは、同じ疾患の初期段階の患者を対象として、同じ3剤併用療法の試験を実施することを提案している。この臨床試験では、3剤併用療法が患者の生存率に及ぼす影響を継続して監視する予定だ。
doi:10.1038/s41586-021-04161-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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