獣医学:英国の都市部に飼い主のいないネコが推定約25万匹もいる
Scientific Reports
2021年10月29日
英国の都市部には飼い主のいないネコが24万7429匹もいるという推定結果がモデル化研究によって得られたことを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。著者たちは、人口密度と剥奪指数が高い都市部の方が、飼い主のいないネコ(野良猫、迷い猫、捨て猫)の数が多い可能性があるという見解を示している。
今回、Jenni McDonaldと、Elizabeth Skillingsは、2016~2018年にイングランドの都市部の5つの市と町(ビーストン、ブラッドフォード、バルウェル、ダンスタブル、エバートン)で行われた3101件の住民調査のデータをモデル化し、それによる知見を877点の居住届出書と601点の専門家報告書を使って分析した。このモデルにおいて飼い主のいないネコを予測する2つの重要な因子は、社会経済的剥奪指数(飼い主のいないネコの個体数変動の31%を予測した)とヒトの人口密度(飼い主のいないネコの個体数変動の7%を予測した)であった。
著者たちは、このモデルをスケールアップし、ヒトの人口密度と剥奪指数のデータを用いて、イングランドと英国全土の飼い主のいないネコの個体数密度を推定できるようにした。この推定結果によれば、英国全土での個体数密度が1平方キロメートル当たり平均9.3匹で、地域によって1平方キロメートル当たり1.9匹から57匹までの幅があった。著者たちは、ヒトの人口密度が高い地域の方が、飼い主のいるペットのネコが多くなる可能性があり、それにより思いがけない出産、遺棄、迷子が起こる可能性があるという考えを示している。著者たちによれば、人間の人口密度が高い地域では、ヒトの食品廃棄物などの栄養源を利用することで飼い主のいないネコの生活が支援される可能性があるとされる。著者たちは、剥奪指数の高い地域では、繁殖を防ぐ飼いネコのタイムリーな去勢に対する障壁が、飼い主のいないネコの個体数密度が高くなっていることと関連している可能性があると推測している。
著者たちは、今回作成されたモデルが、データによる推定に基づいており、数々の要因が各地域の個体群に影響を及ぼす可能性があると警告する一方で、このモデルが、英国における飼い主のいないネコの個体数密度に関する知見をもたらし、これらのネコの個体群を管理するための介入の指針として役立つ可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41598-021-99298-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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