科学コミュニティー:ハッキングによって入手されたデータの責任ある使用に向けたルール
Nature Machine Intelligence
2021年9月17日
今週Nature Machine Intelligence に掲載されるPerspectiveで、ハッキングによって入手されたデータを研究に使用するための倫理的要件がまとめられている。
近年、大量のデータが公開されるようになったことで、計算科学や機械学習の研究が加速している。WikiLeaksのデータセットや2015年に出会い系サイトAshley Madisonから流出したデータなど、ハッキングによって入手されたデータセットは、科学研究にとってユニークで貴重な情報資源となり得る。しかし、個人の同意が得られていない人間のデータを使用する際の倫理的ジレンマについては、早急に対処する必要がある。
今回、Marcello IencaとEffy Vayenaは、科学における不正行為の歴史的事例や現在の研究倫理指針を参考にしながら、ハッキングによって入手されたデータを使用することのメリットとデメリットを議論し、批判的に評価している。著者たちは、ハッキングによって入手されたデータが公開されていれば、研究者がそれらを使用することは合法であるかもしれないが、責任ある研究行為と言えるためには、当該データの使用について明確な倫理的正当性が必要であると結論付けている。そこで著者たちは、こうしたデータの使用に当たって満たすべき6つの倫理的・手続き的要件を提案している。例えば、研究者はハッキングによって入手された問題のデータセットが他に類を見ないものであることを示すとともに、同様のデータを収集する現実的な代替手段がないことも示す必要があるとされる。研究者はさらにリスクと便益の評価を行い、個人のプライバシーが守られるような対策も講じる必要がある。
著者たちはこうした倫理的要件を提案することで、科学コミュニティー内の議論を喚起し、ハッキングによって入手されたデータを、どのような場合に、どのような条件下で研究に使用することができるかを明確にしたいと考えている。
doi:10.1038/s42256-021-00389-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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