Research Press Release

進化:地球上最古の動物を示す証拠かもしれない

Nature

2021年7月29日

古代の岩礁の中に海綿動物のような構造体が特定され、海綿動物が早ければ8億9000万年前から海洋に生息していたと考えられることを報告する論文が、Nature に掲載される。この知見の妥当性が確認されれば、この化石は、これまで知られている中で最古の動物の体化石となり、その次に古い、議論の余地のない海綿動物の化石を約3億5000万年さかのぼることになる。

海綿動物は単純な動物で、現生海綿動物から得られた遺伝学的証拠から、海綿動物が新原生代初期(10億~5億4100万年前)に出現したことが示唆されている。しかし、この時代の海綿動物の体化石は見つかっていない。

今回、Elizabeth Turnerは、カナダ北西部の8億9000万年前の岩礁から採取された岩石試料を調べた。この岩礁は、炭酸カルシウムを析出する細菌類によって形成された。この岩石試料の中に、方解石の結晶を含み、それに囲まれた管状構造体の分岐ネットワークが見つかった。これらの構造体は、角質海綿類(現生海綿動物の一種で市販の浴用スポンジの原材料)の体内に見られる繊維状骨格と、以前に炭酸カルシウム岩で特定され、角質海綿類の体の腐敗によって生成したと考えられている構造体に非常によく似ていた。

Turnerは、これらの構造体が、地球の酸素レベルが動物の生命を維持するために必要と考えられるレベルまで上昇した約9000万年前に、炭酸カルシウム岩礁の内部やその付近に生息していた角質海綿類の遺骸化石であるかもしれないという考えを提示している。この構造体が、海綿動物の体化石と認められるならば、この知見は、初期の動物の進化がこの酸素化事象とは無関係に起こったこと、そして初期の動物が7億2000万~6億3500万年前に起こった厳しい氷河期を生き延びたことを意味している可能性がある。

doi:10.1038/s41586-021-03773-z

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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