Research Press Release

健康:世界的な身体活動レベルは過去20年間で向上していない

Nature Medicine

2026年3月10日

政策の策定および導入が広く行われたにもかかわらず、過去20年にわたり、世界的な身体活動レベルは向上しておらず、性別や社会経済的グループ間で大きな格差が依然として存在している。Nature Medicine および Nature Health に掲載される3つの論文の知見は、現在の身体活動への参加促進の取り組みが不十分であり、身体活動が公衆衛生や気候変動への耐性を含むより広範な社会的目標に貢献するためには、協調的な行動が必要であることを示している。

世界的に、年間500万人以上の死亡が身体活動の不足に起因している。それにもかかわらず、成人の約3人に1人、青少年の約10人に8人が世界保健機関(WHO:World Health Organization)の推奨活動ガイドラインを満たしていない。このガイドラインには、成人向け週150分の中強度身体活動、児童向け1日60分の身体活動が含まれる。これまで、地理、人種、性別、および社会経済的地位といった異なる人口統計学的グループ間で身体活動の格差がどのように存在するかを理解することは困難であった。また、政府がこの公衆衛生問題を政策で優先的に取り組んでいるかどうかも不明である。

Nature Medicine にオープンアクセスで掲載される論文において、Deborah Salvoら(テキサス大学オースティン校〔米国〕)は、世界68か国の身体活動データを分析し、世界中の人々の活動様式に持続的な不平等が存在することを発見した。レジャー運動など能動的な余暇活動(自発的に選択される唯一の活動の種類)の利用は、社会的に恵まれたグループ(高所得国の富裕層男性)が社会的に恵まれないグループ(低所得国の貧困層女性)より40パーセントポイント高かった。対照的に、経済的な必要性から生じる活動(肉体労働など)は、不利な立場の人々でより高かった。著者らは、さらに、身体活動が免疫機能の維持、感染症リスクの低減、および抑うつ症状の軽減に寄与し、がん治療の成果向上と関連している証拠も発見した。

Nature Health にオープンアクセスで掲載される論文において、Erica Hincksonら(オークランド工科大学〔ニュージーランド〕)は、身体活動が気候変動の緩和と適応をいかに支援し得るかを示すモデルを発表している。著者らは、自動車利用に代わる歩行、自転車、および公共交通機関の利用促進策が排出量削減につながる仕組み、および猛暑などの気候変動現象が身体活動を阻害し得る点を概説している。さらに、一部の身体活動推進施策自体が排出量増加に寄与する可能性や、歩きやすい都市の開発にともなう住民の転出といった予期せぬ結果も示している。著者らは、気候変動と健康課題が深く相互に関連していると指摘し、身体活動と気候変動の取り組みは、最も影響を受ける人々の優先事項を反映した共通した目標、手法、および指標を通じて連携すべきだと主張する。これらの課題に対処するには、先住民やそのほかの脆弱なコミュニティーを巻き込んだ包括的なボトムアップアプローチと、公平で気候変動に強い開発を支援するための政府や国際機関による調整された多部門的な行動が必要であると述べている。

Nature Health にオープンアクセスで掲載される別の論文において、Andrea Ramírez Varelaら(テキサス大学ヒューストン健康科学センター〔米国〕)は、2004年から2025年にかけて世界200か国で策定された身体活動促進政策文書661件を分析した。その結果、大半の国が身体活動政策を策定および採用しているものの、実施の証拠は依然として限定的であることが判明した。分析対象661政策のうち、38.7%(256件)は、3つ以上の政府部門(例:保健、教育)に施策を割り当てており、部門横断的な連携の欠如を示している。また、政策文書を有する国の26.5%(53か国)は、その効果を測定するための数値目標を盛り込んでいなかった。政府関係者、学者、政策リーダー、および市民社会の代表者など46名の主要関係者へのインタビューを通じ、研究者らは「身体活動の政治的優先度が低く、かつ上昇傾向にあること」が実施の主要な障壁であると特定した。参加者は、4つの相互に関連する課題をあげている:身体活動を目的そのものとするか、より広範な目標達成の手段とするかについての明確な合意の欠如;身体活動をシステム的問題ではなく個人の健康行動としてとらえ続ける傾向;政府内に「公式の担当部署」が存在せず、指導力と説明責任が分断されていること;そして、社会的、経済的、および商業的要因が活動支援環境を損なう中、部門横断的な連携が脆弱であること。本研究は、政策上の合意形成、利益の認知拡大、多部門にわたるリーダーシップの明確化、および伝統的な保健分野を超えた連携強化を推奨している。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 3(すべての人に健康と福祉を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。

Salvo, D., Crochemore-Silva, I., Wendt, A. et al. Physical activity for public health in the 21st century. Nat Med (2026). https://doi.org/10.1038/s41591-026-04237-5
 

Hinckson, E., Reis, R., Romanello, M. et al. Benefit of physical activity initiatives for climate change mitigation and adaptation. Nat. Health 1, 300–315 (2026). https://doi.org/10.1038/s44360-026-00057-6

 

Ramírez Varela, A., Bauman, A., Woods, C.B. et al. Low global physical activity despite two decades of policy progress. Nat. Health 1, 338–354 (2026). https://doi.org/10.1038/s44360-025-00044-3

 

 

 

doi:10.1038/s41591-026-04237-5

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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