動物の行動:病気のアリはコロニーを守るため自ら犠牲となるよう合図する
Nature Communications
2025年12月3日
単一蟻(アリ)種に関する研究において、病気にかかった未成熟な働きアリは、巣の仲間が自身を破壊するよう促す信号を発することを報告する論文が、今週のオープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この行為は、感染の拡大を防ぐことでコロニー全体に利益をもたらすと考えられている。
病気にかかった成虫アリが病気の拡散を防ぐため巣を離れることは知られている。しかし、幼虫と成虫の中間段階である蛹(さなぎ)として繭に包まれた未成熟なアリはそれができない。これまでの研究では、働きアリが病気のさなぎを識別し、巣の消毒のために破壊することが示されていたが、これが受動的な合図によるものか、感染したアリ自身が開始する能動的なプロセスかは明らかになっていなかった。
Erika Dawsonら(オーストリア科学技術研究所(ISTA)〔オーストリア〕)は、ラシウス・ネグレクトゥス(Lasius neglectus)アリを真菌病原体メタリジウム・ブルンネウム(Metarhizium brunneum)に感染させ、単独および集団環境下での行動を観察することでこのプロセスを調査した。その結果、病気にかかった働きアリのさなぎは、化学信号(変化した体臭)を放出し、これが集団内の成虫アリによる破壊を引き起こすことが判明した。この信号は、成虫働きアリの存在する環境下で病気のアリのみが放出するため、単なる感染や免疫反応の副産物ではないことを示唆している。著者らは次に、この化学信号を健康なさなぎに適用したところ、成虫働きアリによるさなぎの破壊が引き起こされ、この化学物質が効果を誘発する信号として機能することを確認した。
このシグナリングは、一種の利他的行為であり、病気のさなぎがコロニー全体の利益のために自らを犠牲にする。この行動は、個体内の免疫システムの働きに類似しており、コロニー内のアリが集合体の利益のために超個体として機能する実態を示している。
- Article
- Open access
- Published: 02 December 2025
Dawson, E.H., Hoenigsberger, M., Kampleitner, N. et al. Altruistic disease signalling in ant colonies. Nat Commun 16, 10511 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-66175-z
doi:10.1038/s41467-025-66175-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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