素粒子物理学:風変わりなクォーク四重項の定量化
Nature
2025年12月4日
大型ハドロン衝突型加速器(LHC:Large Hadron Collider)のCMS(Compact Muon Solenoid;コンパクトミューオンソレノイド)Collaboration(エレバン物理学研究所〔アルメニア〕)が報告した、オールチャーム・テトラクォーク(all-charm tetraquarks)と呼ばれる特殊(エキゾチック)な粒子の性質測定結果が今週のNature にオープンアクセスで掲載される。この結果は、陽子と中性子を結びつける力に関する理論の検証に利用できる。
クォーク(quark)は、既知の物質の大部分を構成する基本粒子であり、陽子、中性子、およびそのほかの複合粒子(いずれもハドロンと呼ばれる)を形成する。陽子と中性子は、3つのクォークから成る三重項(triplets)で構成され、2つのクォークからなる複合粒子(中間子;meson)も存在するが、粒子加速器での実験により、4つまたは5つのクォークからなるより「エキゾチック」なハドロンの存在が示唆されてきた。しかし、これらの複合体の正確な性質は不明だった。エキゾチックな状態は、2クォークまたは3クォークハドロンが組み合わさったものなのか、それとも単一のコンパクトな物体なのか。CMS Collaborationが報告した4クォークハドロン(テトラクォーク)の測定結果は、決定的ではないものの、後者の説明を支持するものである。
LHCでの一連の実験により、2つのクォークと2つの反クォーク(クォークの反物質対応物)からなるオールチャーム・テトラクォークの観測に成功した。CMS Collaborationは、これらのテトラクォークを研究し、今回、これらのエキゾチックな粒子の電荷反転対称性、パリティー、およびスピンに関する測定結果を報告している。結果は量子数として表される:パリティーと電荷反転対称性はともに正、スピンは2である。これらすべてが、オールチャーム・テトラクォークが中間子対ではなくコンパクトな物体である可能性が高いことを示唆している。著者らは、この発見がエキゾチックなハドロンの理解を深め、ハドロン物質の理論に新たな課題を投げかけると結論づけている。
- Article
- Open access
- Published: 03 December 2025
The CMS Collaboration. Determination of the spin and parity of all-charm tetraquarks. Nature 648, 58–63 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09711-7
News & Views: Quarks in ‘exotic’ quartets prefer to stick together
https://www.nature.com/articles/d41586-025-03591-7
doi:10.1038/s41586-025-09711-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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