社会科学:不安定なビデオ通話は、会話だけでなくそれ以上のものを損なう
Nature
2025年12月4日
ビデオ通話の接続が中断されることで、仮釈放の決定、オンライン診療での助言への信頼、仮想面接後の採用判断など、生活のさまざまな側面に影響を及ぼす可能性があることを報告する論文が、今週のNature に掲載される。この研究は、通信障害が対面会話の錯覚を損ない、対人判断に悪影響を与えることを示唆している。
ビデオ通話は、社交的なつながりから重要な会議や面談まで、さまざまな場面で対面コミュニケーションを代替する手段となっている。しかし、画面のフリーズ、遅延、および音声の歪みなどといった接続問題による不具合の影響を受けるビデオ通話は、約3分の1に上る。こうした問題が深刻な結果を招かないと感じる人もいるかもしれないものの、Jacqueline Rifkin(コーネル大学〔米国〕)、Melanie Brucks(コロンビア大学〔米国〕)らは、特定の状況下で悪影響が生じる可能性を調査した。
一連の実験と実生活のデータは、ビデオ通話の不具合が重要なオンライン上のやりとりの結果を損なう可能性を明らかにした。就職面接の実験では、3,000人以上の参加者がビデオ通話を模した環境で面接録画を視聴した。通話中の不具合は、候補者の採用推薦確率を低下させた。仮想医療相談を模したシナリオでは、497人の参加者が医療アドバイスを聞いた。77%が不具合のない通話では医療専門家との連携に自信があると回答したが、接続問題が発生するとこの割合は61%に低下した。472件のオンライン法廷審理の実データでは、通信障害が発生したケースでは仮釈放が認められる確率が低下した(通話に問題がなかった場合の仮釈放率は60%だったが、問題があった場合は48%に低下した)。
ビデオ通話は、対面会話を模倣するが、映像や音声の不具合はこの錯覚を破壊し、対人判断を損なうと著者らは指摘する。顔の歪みやフリーズ、動きの乱れや音声の遅延、およびエコーなどの一般的な問題は、通話に不気味さや違和感をもたらす。社会的弱者層ではインターネット接続が不十分な場合があり、こうした問題がさらなる不平等を助長し、その結果、重要なオンライン上のやりとりの後に不利な結果を招く恐れがある、と著者らが結論づけている。
- Article
- Published: 03 December 2025
Brucks, M.S., Rifkin, J.R. & Johnson, J.S. Video-call glitches trigger uncanniness and harm consequential life outcomes. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09823-0
doi:10.1038/s41586-025-09823-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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