Research Press Release

天文学:衛星による光害が宇宙天文学研究を脅かしている

Nature

2025年12月4日

低軌道にある宇宙観測所の画像の約96%が、今後10年間で衛星からの光汚染によって損なわれる可能性があることを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この発見は、地球を周回する衛星による光害を最小限に抑えることが、天文学研究の成功に不可欠であることを示唆している。

地球を周回する衛星の数は、おもにペイロード(衛星や観測機器)の打ち上げコストの低下により、2019年の2,000基から15,000基に増加した。衛星が軌道上を移動する際に、NASA (National Aeronautics and Space Administration;アメリカ航空宇宙局)のハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope)など同じ領域を共有する宇宙観測施設は、反射光の筋を捉える可能性がある。これにより、研究用途の画像が完全に使用不能になる恐れがある。これまでの研究では、衛星が地上天文観測に与える影響は調査されてきたが、宇宙望遠鏡への影響は見過ごされてきた。

Alejandro Borlaffら(NASA〔米国〕)は、衛星数が増加する状況下で、4つの宇宙望遠鏡、NASAのハッブルとSPHEREx(Spectro-Photometer for the History of the Universe, Epoch of Reionization and Ices Explorer)、ESA(European Space Agency;欧州宇宙機関)が提案するARRAKIHS(Analysis of Resolved Remnants of Accreted galaxies as a Key Instrument for Halo Surveys)、および中国が計画する巡天望遠鏡(Xuntian telescopes)が400~800キロメートルの軌道で捉える視界をシミュレーションした。計画中の衛星打ち上げデータベースにもとづくと、将来的に56万基の衛星が軌道上に存在すると予測される。これにより、ハッブルの画像の約39.6%、ほかの3台の望遠鏡の画像の96%が汚染される見込みである。同様に著者らは、1回の露出で観測される衛星の平均数をハッブルで2.14基、SPHERExで5.64基、ARRAKIHSで69基、および巡天で92基と予測している。

著者らは有望な解決策として、望遠鏡の運用軌道より低い軌道に衛星を展開する方法をあげている。ただし、こうした低軌道衛星からの放射は、地球のオゾン層に影響を与える可能性がある。

Borlaff, A.S., Marcum, P.M. & Howell, S.B. Satellite megaconstellations will threaten space-based astronomy. Nature 648, 51–57 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09759-5

Nature Podcast: Photobombing satellites could ruin the night sky for space telescopes
https://www.nature.com/articles/d41586-025-03968-8

News: Satellite swarms set to photobomb more than 95% of some telescopes’ images
https://www.nature.com/articles/d41586-025-03953-1

News & Views: Even in space, telescopes can’t escape photobombers
https://www.nature.com/articles/d41586-025-03725-x


 

doi:10.1038/s41586-025-09759-5

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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