【老化】肥満マウスの健康増進と長寿に役立つ合成化合物
Scientific Reports
2011年8月19日
合成化合物SRT1720には、高脂肪食を与えられた成体マウスの寿命を延ばし、健康を改善できる可能性があることがわかった。この研究成果を報告する論文が、Scientific Reportsに発表される。
肥満であると、炎症が促進され、Sirt1のような長寿に関連する遺伝子の発現が抑制されて、老化過程が加速する可能性があると考えられている。これまでの研究では、合成化合物SRT1720によって培養細胞のSirt1遺伝子が活性化し、短期研究で肥満のラットとマウスのSirt1遺伝子が活性化したことが報告されていた。今回、R de Caboたちは、成体マウスに高脂肪食を与えて、SRT1720を与えたところ、平均寿命も最高寿命も延びた。また、SRT1720を80週間以上与えられたマウスにおいては、粗食のマウスの遺伝子発現プロフィールに似た遺伝子発現プロファイルが見られ、代謝、インスリン感受性、肝臓とすい臓の機能の改善といった健康上の効用が確認された。
SRT1720がSirt1遺伝子を直接的に活性化させるかどうかについては今でも論争が続いている。de Caboたちは、今回の研究で判明した寿命と健康に対する影響が、SRT1720によるSirt1遺伝子の直接的あるいは間接的な活性化によるものなのかどうかは断定できなかった。それでも、今回の研究は、肥満マウスにSRT1720を長期投与すると、寿命が延びて、健康状態が改善されたことを確かに示している。こうした知見を臨床応用して、ヒトの寿命と健康増進に役立てるまでには、さらなる研究が必要だ。
doi:10.1038/srep00070
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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