環境科学:中国でのビットコインマイニングが気候に及ぼす影響
Nature Communications
2021年4月7日
中国で、ビットコインマイニングに伴うエネルギー消費量と炭素排出量の増加が急加速していることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。規制強化や政策変更をしない限り、こうした影響が世界の持続可能性への取り組みを台無しにする可能性がある。
暗号通貨の一種であるビットコインは、ブロックチェーン技術に依存しており、銀行のような中央集権的な機関を必要とせず、暗号化されたコンピュータネットワークを介して公開記録に記載されたピアツーピア送金ができる。ビットコインマイニングのためには、コンピュータの処理能力を絶えず消費、あるいは向上させる必要があり、これはエネルギー消費量の増加につながっている。
今回、Dabo Guan、Shouyang Wangたちの研究チームは、シミュレーションに基づく炭素排出モデルを用いて、中国におけるビットコインのブロックチェーンオペレーションの炭素排出フローを追跡調査した。Guanたちは、ビットコインマイニングの現在の傾向を前提として、ビットコインマイニングによるエネルギー消費量が2024年にピーク(約297テラワット時)に達し、炭素排出量が約1億3000万メートルトンを記録すると推定した。この炭素排出量は、ヨーロッパの中規模国家(イタリアやチェコ共和国など)の年間温室効果ガス排出量の総計を上回っており、Guanたちは、こうした影響を低減するために政策介入が重要だという考えを示している。しかし、Guanたちのモデルにさまざまなシナリオを当てはめると、炭素課税のような現在の政策は、ビットコイン産業からの炭素排出を抑制するために効果的ではなく、むしろ、ビットコインマイニングする人々のサイトを個別に規制する政策の方が、現在のエネルギー消費構造を変え、今後のブロックチェーンオペレーションによる炭素排出量を削減するための最善の方法であることが明らかになった。
doi:10.1038/s41467-021-22256-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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