感染症:エボラ出血熱生存者では抗体レベルが上下する
Nature
2021年1月28日
エボラ出血熱から回復した健常者51人中39人で、回復からほぼ1年後に抗体レベルが再び上昇したことを報告する論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、症状が緩和してから時間がかなり経過しても、ウイルスの潜伏リザーバーが存在している可能性を示唆しており、監視プログラムやワクチン接種戦略にとって重要な意味を持つ。
エボラウイルスに感染すると、体内にエボラ出血熱と闘う抗体が作り出される。抗体の濃度は、時間の経過とともにピークに達してから低下し、感染に対するある程度の免疫記憶が体内に残されるが、抗体応答の変化を長期間にわたって調べた研究はほとんどなかった。今回、Georgios Pollakisたちは、2013~2016年にシエラレオネでエボラ出血熱が流行した時の生存者115人のコホートを対象に、その抗体レベルを感染後最大500日間にわたって追跡調査した。抗体の濃度は、回復の急性期に予想通り低下したが、以外にもその約200日後には上昇し、その後低下し続けた。この独特なパターンは、長期間の追跡調査を実施できた研究参加者51人中39人で観察された。
抗体の濃度が上昇した時に参加者の血漿中からエボラウイルスは検出されなかったが、今回の研究は、エボラ出血熱から回復した患者の体内にエボラウイルスが長期間残存する場合のあることを示唆している。眼、中枢神経系、精巣などの免疫学的特権部位に「潜伏」しているエボラウイルスが、複製を開始して、新たな抗体応答を引き起こすと考えられる。Pollakisたちは、このことを念頭に置いて、生存者の長期的なモニタリングが必要であり、生存者の防御抗体応答を増強するためにワクチン接種を繰り返す必要があるかもしれないと示唆している。
doi:10.1038/s41586-020-03146-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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