環境:北極域にはポリエステル繊維が広く分布している
Nature Communications
2021年1月13日
北極域内の海面近くの海水におけるマイクロプラスチック汚染は、約92%が合成繊維によるものであるとする分析結果を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究から、そうした合成繊維の約73%がポリエステルで、布生地に使用される繊維に類似していたことが明らかになった。
マイクロプラスチックは、世界の最も人里離れた地域でも見つかっている。しかし、その分布と発生源とマイクロプラスチック汚染の規模については、まだ多くの疑問が残されている。
今回、Peter Rossたちの研究チームは、2016年にヨーロッパと北米の北極域の観測地点(北極点を含む71か所)で採取された海面近く(海面下3~8メートル)の海水中のマイクロプラスチックの分布について報告している。Rossたちはまた、ボーフォート海の観測地点(6か所)の水深1015メートルまでで採取された海水試料も分析した。その結果、北極域全体におけるマイクロプラスチック粒子の量は1立方メートル当たり約40個と算出された。マイクロプラスチックの主な発生源は合成繊維(92.3%)で、大部分がポリエステルだった。さらに、Rossたちは、北極域東部で西部のほぼ3倍のマイクロプラスチック粒子を観測しており、新たなポリエステル繊維が大西洋から北極海東部に運び込まれているという考えを示している。
今回の研究においてポリエステル繊維による汚染が圧倒的に多いと分かったため、マイクロプラスチックによる世界の海洋汚染には布生地、洗濯、排水が関与していることが浮き彫りになったと、Rossたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41467-020-20347-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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