化学:二酸化炭素をジェット燃料に変換する
Nature Communications
2020年12月23日
低コストの鉄系触媒を使って気体状の二酸化炭素(CO2)をジェット燃料に直接変換する方法が実証された。このCO2は大気中から直接捕捉され、変換されたジェット燃料が飛行中に燃焼するとCO2が大気中に再び放出されるため、将来的には全体的な効果がカーボンニュートラルになる可能性がある。この研究成果を報告する論文が、今週、Nature Communications に掲載される。
カーボンニュートラルな燃料や付加価値の高い化学物質を生産することは、地球の大気に対するCO2の悪影響を軽減する上で重要だ。しかし、CO2を選択的に望ましい化学物質に変換することは困難な作業である。多くの場合、この変換には高コストの触媒やエネルギーを必要とするいくつかの工程が必要で、最終的には、効率が悪くて費用対効果が低くなることが分かっている。化石燃料に対抗する持続可能な燃料生産方法は、効率的で経済的なものでなければならない。
今回、Peter Edwards、Tiancun Xiao、Benzhen Yaoたちの研究グループは、大気中のCO2を直接捕捉し、ジェット燃料(炭化水素燃料)に変換する低コストの方法となる新しい鉄系触媒を設計した。この触媒は、地球上に豊富に存在する元素で構成されており、高い活性と選択性を示し、付加価値の高い化学物質を合成する際の追加工程数を最小限に抑えることができる。また、Edwardsたちは、現在のところは原油からしか取り出せない石油化学産業の他の重要な原材料を、この変換過程において集めることもできた。
このCO2変換触媒は、これまでに提唱された多くの候補物質よりも作成が容易であるため、工業的応用のための有望な候補になると、Edwardsたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41467-020-20214-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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