生態学:成長の早い高木は寿命が短いために炭素貯蔵が影響を受ける可能性がある
Nature Communications
2020年9月9日
成長の早い高木ほど寿命が短いことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、気候変動下での森林の炭素貯蔵量を予測する上で重要な意味を持つ可能性がある。
成長速度が大きくなると寿命が短くなるという関係性は、一部の高木、とりわけ低温に適応した針葉樹に示されているが、これが、さまざまな樹種や気候に幅広く当てはまるかは議論の余地がある。このようなトレードオフは、樹木の成長速度を炭素貯蔵量の代用指標に用いることと両立しないと考えられ、地球システムモデルを用いた全球森林炭素貯蔵量の予測に疑問が生じている。
今回、Roel Brienenたちの研究チームは、アフリカと南極以外の各大陸に生育する樹種110種の年輪データの大規模なデータセットを解析した。Brienenたちは、同種内でも異種間でも高木の成長速度の大きさが寿命の短さと関連することを報告し、これが気候変数や土壌変数との共変性によるものでないことを示した。また、Brienenたちは、クロトウヒ(Picea mariana)に関するデータに基づいたモデル森林シミュレーションを用いて、このトレードオフが、今後、全球的な森林による炭素吸収を鈍化させ、あるいは減少に転じさせる可能性のあることを明らかにした。
以上の知見は、成熟した森林における将来の炭素貯蔵量の予測の大部分に異論を唱えるものであり、今後数十年間の全球的な森林の炭素吸収源の存続を疑問視している。Brienenたちは、樹木の成長速度と寿命のトレードオフをプロセスベースの森林炭素動態モデルに組み込む必要があると訴えている。
doi:10.1038/s41467-020-17966-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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