環境:大西洋には従来の予想を上回る量のプラスチックが存在している
Nature Communications
2020年8月19日
大西洋の海面から水深200メートルの間には、約1200万~2100万トンのマイクロプラスチック廃棄物が存在していることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究では、海洋上層に最も豊富に存在する3種類のプラスチックの定量化が行われ、大西洋全体に存在するプラスチックの量が、これまでの予想よりはるかに多いことが示された。
マイクロプラスチックの蓄積による生態系や環境の被害の評価は、生態系、特に海洋などの遠隔地でのマイクロプラスチックの蓄積についての確かな定量化が実現していないため、進んでいない。
今回、Katsiaryna PabortsavaとRichard Lampittは、大西洋の南北縦断面1万キロメートルに沿った12か所で採取した試料のプラスチック汚染状況を定量化した。具体的には、彼らは、世界のプラスチック廃棄物の半分以上を占める最も一般的な3種類の汎用プラスチック廃棄物(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン)を評価した。それぞれの観測所では、海面下10メートル、海洋混合層下10~30メートル、中間試料採取地点下100メートルの3つの水深で試料を採取した。そして、これらの試料に含まれたプラスチックを約25マイクロメートルの分解能まで分析した。海洋表層近くでは、これら3種類の高分子化合物のマイクロプラスチック粒子(サイズが32~651マイクロメートル)が海水1立方メートル当たり最大7000個検出された。
Pabortsavaたちは、1950~2015年のプラスチック廃棄物の発生動向と、65年間にわたって世界のプラスチック廃棄物の一部が大西洋に流入し続けていたという仮定に基づいて、大西洋の水域と堆積物へのプラスチックの流入量を1700万~4700万トンと推定した。また、Pabortsavaたちは、今回採取された3種類の高分子化合物マイクロプラスチックの質量とこれまでの研究で算出された海洋のプラスチック蓄積量を考慮に入れると、現在、大西洋に存在するマイクロプラスチック廃棄物の総質量が、1950年以降に大西洋に流入したプラスチックの推定量と均衡しているか、あるいは、それを超過している可能性があることを明らかにした。
doi:10.1038/s41467-020-17932-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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