ウイルス学:COVID-19を発症したアカゲザルへのレムデシビル投与で病気の進行を遅らせる
Nature
2020年6月9日
SARS-CoV-2に感染したアカゲザルに対して抗ウイルス薬「レムデシビル」による早期治療を実施したところ、ウイルス量が減少して、肺疾患の予防が達成されたことを報告する論文が、今回Nature に掲載される。この研究知見は、肺炎への進行を阻止する目的でCOVID-19患者にレムデシビルを早期投与する治療方針を支持している。
レムデシビルは、広範な抗ウイルス活性を示し、動物モデルの実験により、SARS-CoV感染症とMERS-CoV感染症の治療に有効なことが実証されている。現在、レムデシビルについては、COVID-19治療薬のヒト臨床試験が行われている。
今回、Emmie de Witたちの研究チームは、レムデシビル治療の効果について、最近確立されたSARS-CoV-2感染モデルであるアカゲザルを使って調べた。今回の研究には、6匹のアカゲザルが2セット用意され、それぞれのアカゲザルにSARS-CoV-2を接種し、治療群の6匹には、ウイルス接種から12時間後(肺におけるウイルス複製のピークに近い時刻)にレムデシビルを投与し、ウイルス接種の6日後まで24時間おきにレムデシビルを投与した。治療群のアカゲザルは、対照群と異なり、呼吸器疾患の徴候を示さず、肺の損傷も小さかった。下気道のウイルス量は減少し、初回投与の12時間後に約100分の1まで減った。また、治療群のアカゲザルからは、初感染の3日後に感染性ウイルスが検出されなくなったが、対照群では6匹中4匹から感染性ウイルスが検出された。治療群のアカゲザルの下気道のウイルス量は減ったが、ウイルス排出が減少したという観察結果は得られなかった。これは、臨床症状の改善とウイルスの感染性が失われたことを必ずしも同一視できないことを示している。
de Witたちは、アカゲザルへのレムデシビルの投与量がヒトへの投与量と同量であることを指摘した上で、このアカゲザルモデルは軽度のSARS-CoV-2感染症しか発症しないのが通例であるため、レムデシビル治療のタイミングをヒトのSARS-CoV-2感染症の疾患段階に直接当てはめることが難しい点について注意を喚起している。それでも今回の研究結果は、レムデシビルを使ったCOVID-19の治療で最大限の効果を得るために、可能な限り早期に治療を開始すべきことを示している。
doi:10.1038/s41586-020-2423-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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