Research Press Release
気候科学:地球温暖化が米国の傷害死に与える影響
Nature Medicine
2020年1月14日
気候変動に関するパリ協定で考えられているように平均気温が1.5℃上昇すると、それが原因で米国本土(アラスカ州とハワイ州を除く)で傷害による死亡が年間1601件増える可能性があることが報告された。
これまで、地球の気温変動に関連して生じる健康への影響は、主として感染症、心疾患、肺疾患などの慢性疾患の増大という観点から研究されてきた。気温の変動が傷害による死亡にどのように影響するかについては、限られたデータしかない。
M Ezzatiたちは、米国本土各地で38年間(1980〜2017)にわたって集められた死亡数と気温のデータを解析した。そして気温が1.5〜2.0℃上昇するというパリ協定のシナリオを用いて、意図しない傷害(溺水、交通事故、転落)と意図的傷害(暴行、自殺行為)に起因する死亡に、月間気温の平均値からのずれがどのような影響をもたらすかを明らかにした。解析では、年齢層、性別によっても分類が行われた。特に暑い年には、死亡件数が推定で1601件増える可能性があることが分かった。予測されるこの死亡増加数のうち、84%は男性で、年齢は15〜64歳が大半を占めるだろうと考えられている。
doi:10.1038/s41591-019-0721-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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