【生物学】北極海の海氷減少は海生哺乳類の疾患の蔓延を助長するかもしれない
Scientific Reports
2019年11月8日
気候変動を原因とする北極海の海氷減少により、海生哺乳類に感染する病原体が北大西洋と北太平洋の間で蔓延する頻度が高まる可能性のあることを報告する論文が、今週掲載される。海氷減少のような環境の変化は、動物の行動を変化させ、それまで別々の海域に生息していた動物個体群が相互に接触できる水路を開いて、新たな病原体への曝露を生じさせる可能性がある。
アザラシジステンパーウイルス(PDV)は、1988年と2002年に北大西洋のゼニガタアザラシの大量死を引き起こし、2004年には北太平洋で確認された。今回、Tracey Goldsteinたちの研究グループは、北太平洋へのPDVの侵入時期、PDVの出現に関連するリスク因子、PDVの伝播パターンを調査した。Goldsteinたちは、2001~2016年に収集された海生哺乳類の移動データに加えて、アザラシ、トド、キタオットセイ、ラッコのPDVへの曝露と感染に関するデータを用いた。
Goldsteinたちは、2003年と2004年に北太平洋における海生哺乳類のPDVへの曝露と感染が広範囲に及んでいたことを明らかにした。PDV陽性の海生哺乳類が30%を超えていたのだ。その後、PDVの有病率は低下したが、2009年に再びピークに達した。2004年と2009年に試料採取された海生哺乳類のPDV感染率は、その他の年の9.2倍だった。このことと関連して、2002年、2005年、2008年に北大西洋から北太平洋に至る水路が開いていたことが、衛星画像によって検出された。
以上の知見は、2002年以降に北太平洋全域でPDVへの曝露と感染が広範囲に及び、数々の海生哺乳類にPDVが伝播し、海氷減少があった後にPDVへの曝露と感染がピークに達したことを示す証拠となっている。北極海の海氷減少が続けば、病原体が北太平洋と北大西洋の間を移動する機会が増える可能性がある。
doi:10.1038/s41598-019-51699-4
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