【計算論的科学】学習に最適な難易度とは
Nature Communications
2019年11月6日
Computer science: An optimum difficulty level for learning
このほど行われた計算論的研究で、学習者の正答率を約85%に保つようにトレーニングの難易度を調整すると、学習が最も急速に生じるという結果が得られたことを報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、学習速度を最大化するための最適設定を明らかにするための理論の構築に役立つかもしれない。
教育のための最適条件をめぐる論点については、何年も前から研究者の間で議論が続けられている。しかし、学習に有益な特定の難易度が存在している理由とその最適レベルが具体的に何なのかは分かっていない。
今回、Robert Wilsonたちの研究グループは、トレーニングの難易度が学習速度に影響するかどうかを調べた。Wilsonたちは、一連の2値分類タスクに用いるアルゴリズムセットのための最適学習条件を導出した。この場合、学習ベースのアルゴリズムは、明確でない刺激(例えば、ランダムパターンをとる少数のコヒーレントドットの移動方向)を2つのグループのいずれかに分類できることが求められた。その結果、最適なエラー率は約15.87%で、逆の言い方をすれば、アルゴリズムの学習精度が約85%の時にトレーニングが最も速く進行することが分かった。また、最適精度でのトレーニングの方が、特定の難易度に固定されたトレーニングよりも速く進行することも分かった。
さらにWilsonたちが、この研究アプローチを人工知能に使われる人工ネットワークと人間や動物の知覚学習を記述すると考えられている計算論的神経科学モデルに適用したところ、最適な学習率が「85%ルール」に従っていることが明らかになった。
doi:10.1038/s41467-019-12552-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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