【生態学】森林の死を予測するための新たな手掛かり
Nature Climate Change
2019年10月8日
森林の回復力(撹乱からの回復速度)の低下は、衛星観測による植生データから検出でき、森林の枯死を予測するための早期予兆信号となる可能性があるという考えを示す論文が掲載される。
森林枯死の発生頻度が高まっていることは全世界で観測されており、その結果としての土地被覆の変化が、生態系と在来種に影響を及ぼしている。また、この数十年間にわたって、気候変動による気温と降水量のパターンの変化が、森林にとってストレスになっている。森林枯死を予測できることは、発生を未然に食い止める上で重要だが、森林枯死の基盤となる機構が解明されていないために難題となっている。
今回、Yanlan Liu、Mukesh Kumarたちの研究グループは、植生動態のリモートセンシングデータを用いて森林枯死を予測するための新しい観測的手法を開発した。この手法は、森林の回復力の変化という早期予兆信号を観測することに基づいている。回復力の変化は、森林が、別の種類の生態系(例えば、潅木地)に変化する可能性が生じる転換点に近づくと起こるのだが、一定期間にわたる衛星観測による植生データの解析によって検出でき、撹乱が起こった後の樹木の葉の回復が遅いことを示している可能性がある。Liuたちは、カリフォルニア州の森林でこの観測的手法を検証し、森林枯死の6~19か月前に森林の回復力の変化を検出できることを発見した。この早期予兆信号は、他の森林衰退の兆候(例えば、緑色植物の密度の低下)よりも早く検出された。
Liuたちは、このシステムによって、森林枯死の予測をこれまでよりも正確かつ早期に行えるようになり、森林管理者が脅威を緩和し、森林の健康を回復させて森林枯死を防止するための時間的余裕が得られると考えている。
doi:10.1038/s41558-019-0583-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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