【惑星科学】火星の古代の塩水湖
Nature Geoscience
2019年10月8日
NASAの火星探査ローバー「キュリオシティー」が、火星のゲール・クレーター内で塩を含む堆積物を検出し、かつてこの場所に塩水湖が存在したことが示唆された。この知見について報告する論文が掲載される。今回の知見は、約35億年前のこの時期に火星が乾燥した気候への移行が起きた、という人工衛星の観察結果に基づくこれまでの推測と一致している。
火星では、in situでさまざまな濃度の塩が検出されており、これは古代の塩水(火星の気候が乾燥した時代を経験するにつれて塩濃度はより濃くなる)の指標と考えられている。キュリオシティーの任務の1つは、ゲール・クレーターを探査して、火星の表面から液体の水がどのようにして消滅したかの理解を進めることである。
今回、William Rapinたちは、約37億年~33億年前の年代(ヘスペリア代)の堆積岩の表面の広範にわたって硫酸塩を検出したことを報告している。これまでキュリオシティーが分析した年代のより古い岩石中では、こうした塩がそうした形・存在度で見つかっていなかった。このため彼らは、今回の測定結果は、水分が蒸発したときにクレーターの湖の塩濃度が上昇した可能性を示す証拠だと推論している。この知見は、火星の気候がヘスペリア代に変動したという仮説を支持する。
今後のキュリオシティーの探査によって、ゲール・クレーター内の年代の若い岩石の調査が進めば、火星の表面が乾燥したことに対するさらなる知見が明らかになると期待される。
doi:10.1038/s41561-019-0458-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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