環境保護者を守る
Nature Sustainability
2019年8月6日
環境や土地の権利を守る人々の死者数に影響を及ぼす主要な要因が、腐敗と法的処置の欠如であることを示した論文が今週掲載される。この知見は、いくつかの紛争地帯における軍務よりも、環境保護の方が、より多くの死をもたらすようになっていることを浮き彫りにしている。
2002~2017年に、50か国1500人以上の人々が、環境問題活動や環境保護(土地、森林、水などの天然資源の保護)に従事している間に殺害された。そうした人々には、弁護士、報道記者、パークレンジャー、自身の土地からの立ち退きや土地への侵害を防ごうとする先住民コミュニティーや伝統的コミュニティーの構成員が含まれる。2002~2017年の死亡率は、1週間当たり2名から4名へと倍増しており、この数字は、英国軍やオーストラリア軍の武装した兵士で、同時期に世界中の現役勤務において殺害された人数の2倍以上である。
今回、N Buttたちは、ガバナンス、天然資源と国民経済に対するその重要性、環境保護者の殺害との間の関連性を分析した。その結果、さまざまな地域や紛争の至る所で殺人が起こっているが、その大半が鉱業やアグリビジネスと関連があることが分かった。この研究からは、腐敗のレベルがより高く、法的監視がより少ない国に、環境保護者の殺害がより多い傾向があることが示唆されている。さらに、先住民グループ出身の環境保護者の死者数が最も多く、暴力の大半は中南米で起こっていることが見いだされた。
著者たちは、環境保護者の殺害事例のうち、有罪が確定したのはわずか10%であることを示しており、企業や投資家、政府は、暴力行為をもたらす環境紛争における自らの役割について、責任を負う必要があると主張している。
doi:10.1038/s41893-019-0349-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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