【健康科学】地球温暖化による暑熱関連死に関して中国の主要都市の死者数を試算する
Nature Communications
2019年8月7日
産業革命前からの気温上昇が摂氏2.0度になると、中国の主要都市における暑熱関連の死亡者数が1.5度の場合より少なくとも2万7900人増える可能性があるという研究知見を報告する論文が、今週掲載される。
今回、Yanjun Wang、Buda Su、Tong Jiangたちの研究グループは、産業革命前からの全球の気温上昇が摂氏1.5度の場合と2.0度の場合の中国の27都市(人口の合計は2億4700万人超)における暑熱関連の死亡率をモデル化し、その上で、2010~2100年について予想される5つの異なる社会経済的シナリオにおける暑熱関連の死亡率を調べた。その結果、暑熱関連死亡率が中国全土で上昇し、上昇のペースが中国北部で速くなる可能性の高いことが示唆された。気温上昇に対する社会経済的適応がない場合には、暑熱関連の死亡率が、気温上昇が摂氏1.5度の場合には100万人当たり約104~130人、摂氏2.0度の場合には100万人当たり約137~170人に増加する可能性がある。なお、気温上昇への適応を評価に組み込んだ場合には、暑熱関連の死亡率が、気温上昇が摂氏1.5度の場合には100万人当たり約49~67人、摂氏2.0度の場合には約59~81人となった。
Wangたちの研究グループは、気温上昇を摂氏1.5度に抑えれば、摂氏2.0度の場合よりも死亡率を18%低下させられる可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-019-11283-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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