鳥の胚はきょうだいが出す振動による捕食リスク信号を知覚する
Nature Ecology & Evolution
2019年7月23日
鳥の胚は卵の中で成鳥の警戒声を知覚し、その情報を振動によって巣内の他の卵へ伝達することができることを示した報告が、今週掲載される。こうした情報は、発生する胚の孵化後の外部環境適応に役立っている可能性がある。
多くの種において、胚は、両親からホルモンや音声によって情報を受け取っており、こうした情報は、出生後の環境に対処するために発生をプログラムするのに役立っている。巣の中で卵として発生する種では、発生の速さを卵の振動によって伝えることができるため、きょうだいが同時に孵化することができる。しかし、外部環境に関する情報が卵によって知覚され、それが巣の中で伝達され得るかどうかは知られていない。
今回、Jose NogueraとAlberto Velandoは、異なるキアシセグロカモメの、卵3個のきょうだいのグループを複数作り、これらを録音した成鳥の捕食者警戒声、または無音状態に曝露した。録音した成鳥の捕食者警戒声を再生したきょうだいでは、巣内の卵3個のうち2個だけにその音声を聞かせ、警戒声が胚発生に影響を与えるかどうか、そしてその情報が第3の卵に伝達されるかどうかを確かめた。
その結果、無音状態に置かれた対照の卵と比べ、警戒声を聞かされた卵は、振動が活発であまり声を出さず、孵化が遅れることが明らかになった。警戒声を聞かされた卵のヒナは、孵化後のストレス関連ホルモンのレベルが高く、捕食者警戒声に対して、より素早くうずくまって反応した。きょうだいが警戒声を聞かされた第3の卵のヒナもストレス関連ホルモン値が高く、きょうだいと同じ行動を取ることが明らかになり、その情報源がきょうだいの振動であると示唆された。
doi:10.1038/s41559-019-0929-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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