D2自己受容体は価値がある
Nature Neuroscience
2011年7月11日
マウスの中脳にあるドーパミンD2自己受容体は、ドーパミン伝達のフィードバック調節に重要な役割を果たし、マウスの食物探索行動と、コカイン報酬特性に対する感受性の両方に影響を及ぼす。これらの知見は、フィードバック調節と報酬感受性におけるD2自己受容体の役割をさらに理解する好機を提供するものだ。
神経伝達物質ドーパミン(DA)は、運動活動の計画から、食物摂取のような目標指向型や報酬指向型の行動予測まで、多岐にわたる複雑な脳機能の制御を促進する。脳のDA経路は薬物乱用のような強迫行動にも結びつけられる。ほとんどのD2受容体は非ドーパミン作動性ニューロンの後シナプス側に存在するが、DA放出ニューロンにもD2受容体が存在し、この自己受容体はDA伝達のフィードバック阻害を引き起こす。以前の研究で、自己受容体の利用度(availability)低下は、薬物乱用にみられる衝動性や再燃への脆弱性と関連付けられることが示唆されている。しかし、薬理学的、遺伝学的研究手段では、D2受容体のフィードバック調節の選択的重要性を確証をもって述べることはできないでいた。
M Rubinsteinらは、中脳のDAニューロンにD2自己受容体を欠失した変異マウスが、フィードバック系を介して調節される正常なドーパミン放出阻害を欠くことを見いだした。このマウスはコカインや食物の報酬に対する嗜好性が増大する。さらに、これらのマウスはコカインの精神運動作用に過敏になることもわかった。
doi:10.1038/nn.2862
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