ニコチン受容体遺伝子が大麻の乱用と関係していた
Nature Neuroscience
2019年6月18日
このほど行われたゲノム規模関連解析研究で、大麻使用障害(CUD)の遺伝的マーカーが突き止められたことを報告する論文が、今週掲載される。このマーカーは、ニコチンに結合する脳受容体の量的制御にも関係すると考えられている。
大麻は世界中で最も頻繁に使用されている違法な精神活性物質で、使用者のおよそ10人に1人が依存状態になる。CUDは、他の種類の嗜癖と同様に、高頻度の有害な使用によって発症し、対人関係や楽しい活動への関与が減り、薬物を摂取しないと渇望や離脱症状が起こる。合法化によって大麻製品が入手しやすくなるにつれて、CUDの罹患率も上昇すると予想されている。
今回、Ditte Demontisたちの研究グループは、デンマークの全国規模のコホートを用いて、CUD患者2000人以上のゲノムと対照被験者5万人近くのゲノムを解析し、比較的高頻度の遺伝的バリアントとCUDの関連を特定した。その結果、CUDは、脳で神経伝達物質アセチルコリンの受容体をコードするCHRNA2遺伝子の発現を制御する遺伝的バリアントと関連していることが明らかになった。次にDemontisたちは、アイスランドの遺伝学研究のコホートに含まれるCUD患者5500人と対照被験者30万人以上の遺伝的解析を行って、上記の解析結果を再現した。また、CUD患者において、認知能力の低下に関連する遺伝的バリアントが全体的に多いことがCUDリスクの増加と関連していることも明らかになった。
Demontisたちは、今回の研究について、CUDと特定の遺伝子を結び付けた初めての大規模研究だと結論付けている。こうした遺伝的差異がCUDの発症に寄与する生物学的機構を解明し、この情報を治療法の改善に用いる方法を突き止めるためには、さらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/s41593-019-0416-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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