【生体医用工学】ブタで実証された自己発電式の心臓ペースメーカー
Nature Communications
2019年4月24日
電池を使わず、心臓の拍動から得たエネルギーを電力に変換して心臓ペースメーカーを駆動するデバイスについて報告する論文が、今週掲載される。このデバイスを用いた埋め込み型心臓ペースメーカーは、成体ブタで実証され、洞不整脈(心拍が不規則な状態)を修正することもできた。
現在用いられているペースメーカーやその他の埋め込み型医療機器を駆動するための電池は、大型で、柔軟性がなく、寿命が短い。自力でエネルギーを電力に変換して駆動する埋め込み型デバイスは、生理的調節に使用できるが、大量のエネルギーを必要としない小型動物と細胞モデルを使った実証しか行われていない。
今回、Zhou Li、Zhong Lin Wangたちの研究グループは、心臓の拍動から得たエネルギーを市販のペースメーカーの駆動に十分な電力に変換できる埋め込み型デバイスを開発した。このデバイスは、電源管理ユニットとペースメーカーと組み合わせて用いられ、生体適合性を有していて、機械的な耐久性がある。著者たちは、この埋め込み型システムをブタで検証し、心臓ペーシングができるだけでなく、洞不整脈を修正し、死に至る恐れのある病状(洞停止や心室細動など)への悪化を防ぐことができることを実証した。
この埋め込み型システムの大きさ、効率、および長期にわたるバイオセーフティーが最適化されなければ、適用範囲をヒトに広げることはできないが、1回の心周期で得られる電力は、ヒトの心臓の拍動を制御するために必要な電力を上回っていた。著者たちは、この技術は組織工学、神経再生、幹細胞の分化などの用途に応用できる可能性があると考えている。
doi:10.1038/s41467-019-09851-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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