【社会科学】道徳を説く神への信仰は複雑社会の出現後に始まった
Nature
2019年3月21日
道徳を説く神への信仰は人間社会の拡大の後に起こったもので、社会的複雑性を高めるために重要ではなかったことを報告する論文が、今週掲載される。
ここ1000年間は「向社会的な宗教」の広がりが顕著になっている。このような宗教では、強力な「道徳律に従うことを求める神」、またはより一般的な道徳律違反に対する「超自然的な罰」(例えば、仏教におけるカルマ)の存在が自明とされている。道徳律に従うことを求める神の存在と社会的複雑性とが関連していることは先行研究で示唆されているが、両者の関係を巡っては論争がある。
今回、Patrick Savageたちの研究グループは、世界史上の数百の社会の社会構造、宗教とその他の領域に関する標準化データを解析して、道徳律に従うことを求める神と社会的複雑性の関係を検証した。この研究では、過去1万年間に世界の30の地域に存在した414の社会の記録を、社会的複雑性の評価基準(51種)と道徳律の超自然的強制の評価基準(4種)に基づいて系統的に符号化した。その結果、道徳律に従うことを求める神への信仰は、社会的複雑性が増した後に起こり、「メガ社会」(人口が約100万人を超える社会)の出現後に起こる傾向のあることが判明した。Savageたちは、道徳律に従うことを求める神への信仰は人間社会の複雑性が増すための必要条件ではなく、社会が一定の規模を超えた時に社会の協調性を維持するために必要な文化的適応だと考えられると主張している。この原因について、Savageたちは、多民族帝国で多種多様な人々を共通の高次権力に従わせるために必要だった可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-019-1043-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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